具材たっぷりのロシアの代表的な惣菜パン、ピロシキとは
多くの具材が中に詰まったピロシキは、ボルシチと並んで有名なロシアの伝統料理です。最近は日本でもよく見かけますが、実は日本で売られている多くのピロシキは、本場のものとはちょっと異なるんです。それではどこがどう違うのか、ここでは歴史や発祥にもスポットを当てて、ピロシキについてご紹介します。
ピロシキとは
ピロシキはロシアの家庭料理の1つです。
大きさは握りこぶしと同じくらいかもう少し大きいくらいで、真ん丸だったりラグビーボールのような形をしていたりします。パン生地の中にはさまざまな具が入っており、コース料理の前菜であったり、惣菜であったり、ときにはスイーツとして食べられるほどバリエーションが豊かです。
本場ロシアでは、日本人にとってのおにぎりともいえるほどポピュラーな料理で、かつレストランのコース料理の前菜にもなるほどアレンジが利きやすいという特徴があります。
ピロシキの発祥・歴史
もともとロシアには、「ピロギ(ピローグ)」と呼ばれる料理がありました。ピロギはオーブンの天板いっぱいに小麦生地を敷き、具を挟んで焼いた料理で、大きさは約40cm四方と巨大です。このピロギを、持ち運んだり簡単に食べたりできるように小さくしたものがピロシキなのです。
ピロギはロシアの古典文学にもよく登場する料理で、歴代のロシア皇帝も好んで食べていたとされます。現在でもピロギは食べられており、結婚などお祝いの席で出されることも。昔の花嫁は、おいしいピロギが作れると喜ばれたといわれています。
ピロギから派生したピロシキは、ウクライナやベラルーシ、ポーランドなどの東ヨーロッパ地域全体で伝統的に食べられています。
本場ロシアと日本のピロシキの違い
本場ロシアのピロシキは、日本で見られるものとは異なる点が多くあります。
作り方の違い
最も大きな違いとして挙げられるのが、作り方でしょう。日本では、油で揚げてドーナツのように作るのが一般的ですが、ロシアでは本来オーブンで焼くスタイルが主流です。現在では、ロシアでも揚げて作る場合もあるようですが、やはり多くの場合は焼いて作ります。
具材の違い
中に詰める具材にも日本のピロシキとは違いが見られます。
日本では、炒めた春雨やシイタケなどを詰めて、中華まんのような味付けになっていることが多々ありますが、本来具材は何でも良いのです。
肉の場合は、牛・豚・鶏・羊などのひき肉やレバーなどを炒めたものが入ることもありますし、魚であれば鮭やチョウザメなどを焼いてほぐしたものが入ります。野菜はマッシュポテトやタマネギ、ニンジン、キャベツなどが一般的です。その他にも、ゆで卵、きのこ、米などを入れることもあります。
また、主食やおかずになりそうな具材ばかりではなく、ジャムや煮たフルーツが入ったものもあり、こちらはおやつの時間やお茶の時間に食べられます。
具材作りに特別なルールはなく、材料を自由に組み合わせてあんにしますが、地方や家庭によってもピロシキの味は異なります。それが、ピロシキが家庭の味といわれる理由でしょう。
日本のピロシキの歴史
日本では、昭和20年代の渋谷にあった「ロゴスキー」というロシア料理店で初めてピロシキが提供されたといわれています。戦時中に満州のロシア人街に住んでいた店主が、幾度となく口にした本場のロシア料理の味を日本でも再現したいと考えたことがきっかけのようです。
そして試行錯誤の末、日本人の口に合うように考え出したピロシキが、現在の日本で主流になっている春雨入りのピロシキです。春雨を入れた理由は、具材から出るおいしいスープを吸って、無駄なく素材のうまみを味わえるためだと伝えられています。
また、余談ですが、日本風ピロシキはカレーパン誕生のきっかけになったという説もあります。
おわりに
ロシアの皇帝一族も愛していたピロギは、より食べやすいカジュアルな形のピロシキになり、日本に伝わり、現在では日本のパン屋さんでも見かけるようになりました。
本場ロシアとは作り方や味が多少違っていても、ピロシキは日本でも多くの人に愛されるパンです。まだ味わったことのない方は、ぜひ一度食べてみてはいかがでしょうか。