「啓蟄」の甘酒蒸しぱん【シリーズ:二十四節気を楽しむぱん】
二十四節気を楽しむ 一膳の手まるめぱん
1年を太陽の動きに合わせて24の期間に分け、季節を表した「二十四節気」。太陰太陽暦(旧暦)では季節を表すために用いられていました。
「じゃぱん」では二十四節気(にじゅうしせっき)を区切りとし、その時期に旬を迎える食材を使った「手まるめぱん」を連載でお届けします。
シンプルなレシピでつくる、手のひらサイズの手まるめぱん。日本の四季を感じる日本ならではのパンを、気軽に楽しみませんか?
「啓蟄」3月5日ごろ
「啓蟄」とは、春の陽気に誘われて、土の中の虫が動き出すころのこと。虫に限らずさまざまな生き物が春の気配を感じて動き出す、雨が降るたびに春が近づく、そんな季節です。田畑の準備も本格的になり、一日ごとに日の入りが伸びていきます。3月3日が桃の節句ですが、旧暦の3月3日は新暦の3月下旬から4月上旬にあたり、ちょうど、桃の花が咲くころです。
「甘酒」は夏の飲みもの?
桃の節句、ひなまつりには「甘酒」を飲む風習がありますね。ひなまつりの飲み物、と思っている方が多いかもしれませんが、甘酒の季語は夏。クーラーも冷蔵庫もなかった江戸時代、夏の暑さをのりきる知恵として飲まれたのが、糀でつくる「甘酒」なのです。江戸の夏バテ対策といえば、金持ちはうなぎ、庶民は冷やした甘酒だったそうです。
甘酒は、日本の伝統的な発酵食品の一つ。蒸した米にカビの一種、麹菌(こうじきん)を加えて繁殖させたものが糀(こうじ)、その糀で炊いた米を糖化させます。ほぼ一晩でできあがるので、その昔は「一夜酒(ヒトヨザケ)」とも呼ばれていました。
実は、甘酒と呼ばれているものには2種類あります
【1】米と米糀で作る甘酒:これが本来の昔ながらの甘酒です(糀に湯を加えて作る方法もあります)。
【2】酒粕を溶いて甘味を加えて作る甘酒:こちらは酒粕を湯で溶いて砂糖を加えて作る甘酒です。神社などでふるまわれているのはこちらですね。酒粕ももともとは米と糀なのですが、アルコール分が微量に含まれていることがあるので気をつけた方がいいのと、独特の風味が嫌いという人が少なくありません。
二つを同じ「甘酒」と呼ぶためややこしいのですが、ひなまつりにはお子さんが安心して飲むことができる【2】の方をおすすめします。
「啓蟄」の甘酒蒸しぱんのつくりかた
今回は、ひなまつりの甘酒を使った蒸しぱんを作ってみます。甘酒が入った生地は少々べたべたしますが、蒸しぱんなら少々形が悪くてもおいしくいただけます。甘酒のやさしい甘さともちもち感を楽しむにも蒸しパンがおすすめ。プレーン以外に紫芋でピンク、抹茶で緑に色付けたひなあられ風の小さな蒸しぱん3種です。
シンプルで簡単!手のひらサイズのパンは1カップの小麦粉で。
ふつう手ごねでもホームベーカリーでも、1斤の食パンを焼くには300g前後の小麦粉を使います。でも一人暮らしではちょっと多いし、発酵にも時間がかかりそう…と思う方、1カップ=100gの小麦粉で小さな「手まるめぱん」を作ってみませんか?材料と作り方はとてもシンプルです。
<材料>12個分
- パン用小麦粉(強力粉)1カップ(100g)
- 塩 小さじ1/4
- 甘酒 大さじ1
- 白神こだま酵母 小さじ1/2
- 紫芋(蒸して)小さじ1 ※色付け用
- 抹茶 小さじ1 ※色付け用
※お使いになる小麦粉によって水分量が変わります。詳しくは小麦粉の商品説明書にてご確認の上、当レシピをご参照ください。
<作り方>
- 白神こだま酵母は、35℃くらいのぬるま湯小さじ1に浸して5分ほどおく。
- ピンクの色付け用紫芋を蒸して皮をむいておく(多めに蒸してから計る方がよい)。
- 小麦粉に塩を混ぜておく。(1)の酵母と甘酒をあわせて、生地の様子を見ながら55g前後のぬるま湯を加え、耳たぶくらいの固さになるよう手のひらで温めながら捏ねていく。3等分して、何も入れないプレーン、抹茶を加えて緑、紫芋を加えてピンク、の3種類に分けてそれぞれ捏ねる。
- 乾燥しないように大きめのボウルなどに入れて30℃前後に保温し、大きさが2.5倍、指でおして生地が戻ってこなくなるまで発酵させる。
- 3種類の生地を2等分にして10分ほど休ませる。丸く形を整えて蒸篭に間をあけて並べ、暖かいところで30分~1時間ほど発酵させる。
- 蒸気の上がった蒸篭で10分ほど蒸す。
おわりに
いかがですか?小さいお子さんにも喜ばれる一口サイズの蒸しぱん、色を付けないプレーンでも十分おいしいです。蒸篭がない場合は、鍋に湯を張って、台座にのせたザルに入れて蒸すこともできます。小さく作ると火も通りやすいので短時間で蒸しあがります。残り物の甘酒といわず、ぜひ甘酒を手に入れて作ってみてくださいね!